越境ECの集客完全攻略|成功ポイントと実践施策

越境ECの競争が激化するなか、海外顧客を獲得するための「集客戦略」は成否を分ける要素です。国内と同じ手法では通用せず、現地ニーズを捉えた訴求と継続的な改善が欠かせません。本記事では、海外市場における集客の基本と、効果的なマーケティング手法を8つに分類し、戦略設計からKPI管理、成功事例までを網羅的に解説します。
越境ECの集客基礎理解

海外集客は単なる流入施策ではなく、ターゲット市場の習慣や文化に沿った「戦略設計」が重要です。まずは土台となる3つの観点から集客設計の基礎を固めましょう。
海外市場調査とターゲット設定
越境EC集客において最初に取り組むべきは、販売国の消費者特性と競合状況の把握です。国ごとに文化・価格感・検索行動が異なるため、自社商材がどの層に響くかを明確にしなければ、訴求も広告費も無駄になってしまいます。
まずは、現地言語での検索ボリューム、レビュー傾向、モールでの売れ筋商品を分析し、ペルソナ設定とともに優先国を選定しましょう。
自社ECサイトとモール活用比較
集客チャネルの選定では、自社ECと海外モールの両軸を比較検討する必要があります。モール型は初期流入と信頼性を確保しやすく、販路拡大に向いています。一方、自社ECサイトはLTV管理やCRM施策が可能で、長期的なブランド構築に優れます。商材の知名度や販促の自由度、利益率を踏まえて両者の役割分担を明確にすることが重要です。
顧客旅路とコンバージョン設計
海外ユーザーの購買導線を理解し、認知から購入に至るまでの「カスタマージャーニー」を設計することが集客の基盤になります。
ユーザーがどの接点で商品を認知し、比較・検討・購入・再購入に至るのかを明確にし、それぞれのステージに適した広告・SNS・CRMを配置することでCV率が高まります。特に現地言語によるレビュー整備やFAQの充実は、途中離脱を防ぐ大きな要素となります。
越境ECの集客方法8選
越境ECにおける集客戦略は、多チャネルを適切に使い分けることが鍵です。ここでは、成果に直結しやすい8つの実践的な施策を紹介します。
SEOの多言語最適化
現地検索エンジンでの上位表示を狙うには、言語ごとのSEO対策が必須です。Googleだけでなく、Bing・Naver・Baiduなど対象国に合った検索エンジンを選定し、現地語でのキーワード調査とコンテンツ制作を行いましょう。
商品ページやブログ記事は機械翻訳ではなく、ネイティブチェックを通すことで自然な表現となり、検索順位とCV率の両面で優位に立てます。
SNSマーケティング
越境ECでは、SNSを通じて「共感」と「信頼」を醸成することが重要です。Instagram、Facebook、YouTube、TikTokなど、国によって人気プラットフォームが異なるため、ターゲット層が集まる媒体に絞って運用を開始しましょう。ユーザーとのやりとりやUGC(投稿された写真や動画)の活用により、ブランド認知の加速とリピーター獲得を狙えます。
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インフルエンサープロモーション
現地のマイクロ〜ミドルインフルエンサーと提携し、商材の認知拡大と信頼構築を図ります。単発での紹介ではなく、製品体験やレビュー投稿を組み合わせた「ストーリーベースの訴求」が効果的です。ターゲット層に合わせて、料理系・美容系・ファッション系など、ジャンルに特化した人物を選ぶことが成果に直結します。
Web広告リターゲティング
広告運用では、最初の接触ではCVしないユーザーに対して「リターゲティング広告」を活用することで、再訪と購買の確率を高められます。GoogleリマーケティングやMeta広告のカスタムオーディエンス機能を活用し、閲覧した商品やカート放棄に合わせた広告を表示する仕組みを設計することが有効です。
ライブコマース動画活用
動画配信によるライブコマースは、中国・台湾・タイなどで急速に普及しています。現地スタッフやインフルエンサーが商品の使用方法や魅力をリアルタイムで伝えることで、購入意欲を直接刺激できます。ライブ配信後に購入ページへ誘導する導線設計と、アーカイブ動画の再活用による継続的訴求が重要です。
海外メディアPR記事
現地オンラインメディアやWebマガジンへの寄稿・掲載は、SEOとブランディングの両面で効果があります。信頼度の高いメディアを通じて紹介されることで、購入前の情報収集フェーズにあるユーザーの不安を払拭しやすくなります。
商材に合ったジャンル(美容、暮らし、健康など)の媒体を選定し、ネイティブライターによるコンテンツ提供を行いましょう。
現地トレードショー出展
リアルイベントへの出展は、BtoB販路拡大や現地バイヤーとの接点形成に効果的です。特に、食品・美容・伝統工芸など、試用・試食が購入意思に直結する商材では、五感での訴求が購買動機につながります。出展後には会場で収集したリード情報を元に、メールマーケティングや再ターゲティング広告を活用しましょう。
アンテナショップオムニチャネル
現地の商業施設や百貨店に期間限定のアンテナショップを展開し、オフラインとオンラインを融合させたオムニチャネル戦略を取ることも有効です。現物を確認したあとで自社ECサイトで再購入する導線設計や、POP・チラシにQRコードを掲載するなど、O2O(Online to Offline)施策を取り入れることでブランド体験の接触機会を増やせます。
集客前に解決すべき課題

越境ECにおいて集客施策を本格化させる前に、ユーザー体験の土台を整えることが欠かせません。ここでは、CVにつながりにくい原因となる3つのボトルネックと、その解消策を紹介します。
物流配送スピード最適化
海外ユーザーの購入判断において「配送の速さと確実性」は重要な意思決定要素です。配送日数が不明確だったり、到着が遅れたりすることで、商品をカートに入れたまま離脱するケースが多発します。特にモバイルファーストなユーザー層にとっては「いつ届くか」が明記されていないだけで不安を感じやすくなります。
対策としては、DHLやEMSなどの国際配送業者と連携し、国別の配送日数を明記したうえで、トラッキングリンク付きの通知を導入しましょう。さらに、現地倉庫を活用したローカル配送モデルを構築することで、配送スピードとコストの両面で優位性を確保できます。
多通貨決済と為替リスク管理
集客で流入が増えても、決済フローでつまずくとCV率は大幅に下がります。とくに「日本円のみ対応」「為替が高騰して価格に差がある」といった場合、海外ユーザーは購入を見送る傾向にあります。また、事業者側も為替変動の影響で収益の安定性を損なう可能性があります。
そのため、多通貨決済に対応した越境ECカートや決済代行サービスを導入し、ユーザーの通貨で決済ができるようにすることが重要です。加えて、為替変動に備えて商品価格を一定幅高めに設定し、為替損益を調整する「レートバッファ戦略」も有効です。
現地言語カスタマーサポート体制
集客しても問い合わせやトラブル時に対応できなければ、顧客満足度は低下し、悪いレビューやリピート離脱に繋がります。特に商品説明が翻訳されていても、問い合わせ先が英語対応のみだったり、返信が遅かったりすると信頼が損なわれやすくなります。
対応策としては、現地言語でのメール・チャットサポート体制を整備するか、通訳オペレーター付きのカスタマーサービス代行を導入するのが現実的です。AIチャットボットを多言語対応にすることで、一次対応の自動化を図ることも可能です。信頼感を得るには、FAQや返品ポリシーも現地語で整備しておくことが望ましいでしょう。
成功ポイントを押さえるKPI設計
集客を成果につなげるには、感覚ではなく「数値に基づいた改善サイクル」が不可欠です。ここでは、越境ECにおけるKPI設計の基本と、注目すべき3つの指標を紹介します。
CAC/LTV目標設定
集客の費用対効果を測るうえで、「CAC(顧客獲得単価)」と「LTV(顧客生涯価値)」のバランスを把握することが重要です。たとえば、1人の顧客獲得に1000円をかけたとしても、その顧客がLTV1万円でリピート購入してくれるのであれば、集客投資としては十分に成立します。
まずは、自社の平均注文単価とリピート率からLTVを試算し、許容できるCACの上限を定義しましょう。広告運用やキャンペーン設計ではこの数値を基準にし、集客コストを最適化することが利益の最大化につながります。
広告ROIとPDCAサイクル
広告施策を実施する際は、「ROI(投資対効果)」を必ず数値で追う仕組みを整えましょう。Google広告やMeta広告では、クリック単価(CPC)やコンバージョン単価(CPA)に加えて、売上・利益との関連性をもとにROIを算出する必要があります。
数値をもとにしたPDCAサイクルの運用では、A/Bテストによる訴求文やバナーの検証、地域別・属性別での成果分析を行い、反応の良いクリエイティブに集中投資する形で広告精度を高めていきます。
CRM強化とリピート促進
初回購入後のフォローを強化し、リピート購入へとつなげることがLTV向上に直結します。メールマガジン・LINE配信・購入後アンケートなどのCRM施策を活用し、定期的な接点を設けることで顧客の離脱を防ぎます。
特に、購入後7日以内のメールやレビュー依頼、次回購入で使えるクーポン配布などのタイミング施策は効果的です。また、RFM分析に基づいたセグメントごとの対応も重要で、優良顧客には限定オファーやVIP施策などで満足度と継続率を高めていきましょう。
越境EC集客の成功事例

実際に成果を上げている企業の事例は、自社の集客戦略を構築するうえで非常に参考になります。ここでは、業種・商材の異なる3社の越境EC成功事例を紹介します。
Tokyo Otaku Mode
アニメやフィギュアなど、日本のポップカルチャーを海外へ届けるTokyo Otaku Modeは、SNSを軸にファンコミュニティを構築したことで成功した代表例です。Facebookページで2,000万以上の「いいね!」を獲得し、投稿からECサイトへの送客を実現。さらに、多言語対応の自社サイトを構築し、英語圏を中心に熱量の高いファンを集客しています。
加えて、150ドル以上の注文で送料無料などの明確な購入インセンティブも設計されており、初回購入後のLTVを意識した施策が継続率向上に寄与しています。
Sazen Tea
高級日本茶を取り扱うSazen Teaは、SEOとコンテンツマーケティングを駆使してオーガニック流入を拡大させた事例です。英語圏を中心に「green tea benefits」「matcha for beginners」などのキーワードで流入を獲得し、茶葉の違いや淹れ方を丁寧に説明するブログコンテンツでブランド信頼を構築しました。
さらに、Google広告との連携で運用型広告からの流入も強化し、SEOと広告のハイブリッド施策で売上は2年間で20倍に拡大。購入者の約半数がリピーターというLTVの高さも特徴です。
Model Train Plus
鉄道模型を海外販売するModel Train Plusは、ニッチ市場への特化と多言語ローカライズによって成功を収めた事例です。欧米では日本の鉄道文化に興味を持つコアファンが多く、限定生産商品や廃盤モデルに強い関心がある層をターゲットに設定。
商品説明ページを英語とドイツ語で展開し、ブログでは日本鉄道文化の背景をストーリー仕立てで発信。海外メディアへのPR記事配信も活用し、ブランド認知を段階的に拡大しました。配送面では、日本郵便と連携して海外追跡可能な配送を採用し、安心感も購買動機につながっています。
まとめ
越境ECの集客を成功させるためには、現地ニーズに合わせた戦略設計と、多様な集客手段の組み合わせが不可欠です。海外市場ごとに異なる文化・購買動機・プラットフォーム利用傾向を把握し、それに基づいた多言語SEO・SNS活用・インフルエンサー施策・Web広告などの実践が成果につながります。
また、集客の前には配送体制・多通貨決済・カスタマーサポートなど、基盤の整備が求められます。そして集客後は、KPI設計とPDCAによる改善、リピート促進のCRM施策でLTVの最大化を図ることが重要です。
株式会社そばにでは、越境ECにおける「戦略設計〜集客〜運用改善」までを一気通貫でサポート可能です。現地調査や多言語SEOの実行、広告運用からLTV設計まで、事業フェーズに応じた最適な提案をご用意しております。これから海外展開を目指す方も、集客に課題を感じている方も、ぜひ一度ご相談ください。
大阪府出身。学生起業でAmazon OEM自社ブランド事業を行いながらコンサルタントして活動。
その後新卒で(株)船井総合研究所に入社し、Amazonを中心としたECコンサルティングに従事。
独立し、ECコンサルとシステム開発を行う(株)NOVASTOを設立。
その後「(株)そばに」にEC支援事業を移管。Amazon販売支援歴10年、Amazon プラチナム・パートナー・エージェンシー企業として累計800社のAmazon販売事業者様のサポートし、多数のベストセラー獲得商品、Amazon.co.jp販売事業者ワード受賞企業を複数輩出してきた実績を持つ。
ゴルフパター練習機ブランド「PuttOUT」をM&Aで取得し、売上を1年半で10倍に成長させる。

















