農業生産法人ワタナベ(以下ワタナベ)は、農業生産を目的に設立された会社です。平成24年の創業以来、米を中心に麦や大麦、小麦、牛の餌となる穀物などを生産してきました。
2023年10月、それまでの卸先であった物流会社が経営難により撤退。2023年末には50tもの在庫を抱えていましたが、2024年4月のAmazon出品を機に事態は急展開を迎え、今では常に在庫を心配しなければならないほど好調な売れ行きを維持しています。
今回は、ワタナベの生産者であり、代表取締役も務める渡邉氏に、激動の経緯を伺いしました。
生産力には自信がある。販売ノウハウさえわかれば…藁をも掴む思いでいたときに目に飛び込んできたコラム記事が救いの一手に
もともとは生産のみを事業のメインとしていたワタナベが販売にも力を入れようと考え始めたのは、2023年の10月ころ。当時の卸先である物流会社とのやりとりがきっかけになったといいます。
「当時は、当社が玄米の状態で卸した米を物流会社が精米し、袋詰めしてAmazonなどで販売する、といった商流で販売していました。この方法だと煩わしい販促などの手間もなく販売できるため、生産者としては理想的な流れだと思っていたんです。
実際に農業界では古くから当たり前のように行われてきた流れで、現在でも農協を挟む取引が大きなウエイトを占めています。」(渡邉氏)
しかし、ここでの経験がのちの販売への原動力につながっていると渡邉氏は話します。
「物流会社の担当者と顔を合わせるたびに、Amazonでの販売成績がよいことは聞いていました。私自身も「こんなに売れるのか」と驚きながら見ていたのですが、あるとき、その担当者がふとこんなことを漏らしたんです。
「こんなに儲けられるのに、なぜ自分で販売しないのですか?」と。
これは悔しかったですね、「販売の仕方をわかっている自分たちは儲けられている、農家にはできないだろう?」と言われているような気がして…
それで、いつかは自分で販売まで行いたいと思うようになりました。」(渡邉氏)
2023年10月に物流会社が経営難により事業から撤退したことを機に、ワタナベはついに自社でのAmazon出品へと動き出しました。ところが…
「基礎的な用語すらわかないわけです。ひとつ新しい用語に出会うたびに検索するといった状態でした…」(渡邉氏)
そうして検索を行うなかで渡邉氏の目に飛び込んだのが、そばにのコラム記事だったそうです。
「毎日わからないこと続きで、頭がおかしくなりそうな状況でしたので、救世主が現れたような気分でした。
他社情報もいくつか確認はしましたが、商談を行ったのはそばにさんだけで、初回で間違いないと確信できたため依頼を即決しました。逆にそばにさんから「もう少しご検討されなくても大丈夫ですか?」とご心配いただいたほどです。
ただ、当時の私にはスピード感を大事にしたい事情がありました」(渡邉氏)
「古米になる前に50tの在庫を売りさばかなければ…」ところがいざ販売を開始すると、販売開始初月で累計2,500袋以上も売り上げ、一転して在庫を心配するフェーズに!
刈り取りから 1年が経過したコメは古米として扱われ、新米のようには売れなくなるというのが市場の定説です。そばにへのご相談時点ですでに50tもの在庫を抱えていたワタナベには、「これをすべて新米のうちに売りさばかなければならない」という焦りがありました。
「とにかく早く販売を開始したかったのが正直なところです。
ところが、農業一筋でパソコン作業も得意なわけではない私が、よくわからず当初登録を頑張ってみたんですが、後から振り返ると誤った設定などをしていたようなんです。その結果、販売開始を進めるためにそばにさんへバトンタッチしたんですが、いくつかのトラブルを解決するための原因特定やトラブルの解決に、かなり時間がかかってしまいました。
素人が余計な手出しをしてしまったために、かえって出品までの時期を遅らせてしまいました。自分でわからずに登録をするよりも早く信頼のできるプロに相談し、任せていれば、私が経験したようなトラブルは起きなかったと思います。」(渡邉氏)
本来は2024年の年明けに販売を開始する予定でしたが、商品登録のカテゴリー申請で不受理が続くようなトラブルが続き、最終的な販売開始時期は2024年4月までずれ込みました。
ところがいざ販売を開始してみると、驚きの結果が待ち受けていたのです。
「なんと、販売初月だけで5kgのお米が2,500袋以上も売れたんです。もともと50tほどあった在庫も、今では2,000袋ほどを残すのみといった状況です。」(渡邉氏)
「Amazonでの戦略の観点から見て、在庫が切れてしまった商品ページは検索結果から消えてしまいます。そのため現在では、商品ページを維持した状態で次の収穫期である10月を迎えるために、今は逆に出荷数を抑える施策に移行している最中です。」(渡邉氏)
得られた成果
定量
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定性
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米の出品ならではの苦労…Amazon独自のルールや納品スタイルも乗り越えて目指す、次なる戦略
ここまでワタナベの成功を紹介してきましたが、実は、Amazonでの米の出品はそう簡単なものではありません。
「Amazonには、「精米してから6日以内にAmazonの倉庫に納めなければならない」という独自ルールがあるんです。米自体は割と保存のきく商品なのですが、このルールのせいでAmazonへの出品ハードルが上っています。
加えて、輸送の問題もありました。米は重たい商品ですので、大量の場合はパレットで 一気に納品します。そうすると、Amazon側の受け入れ業者の手配が難しくなるんです。
さらに、納品先の倉庫の場所と納入時間も毎回Amazon側から指定されます。指定時間ジャストにその場所に行かなければならないのですが、大量で重たい米をすぐにピックアップしてくれる業者を見つけるのも至難の業。場合によっては別途料金を支払い、チャーター便を利用して納入したこともありました。」(渡邉氏)
そういった苦労を乗り越えた今は、次なる戦略にも動き出しているとのこと。今後は1合分の少量パックの開発や、食べ方やレシピなどレビュー内容をなぞらえた動画の設置を予定しているそうです。
「当社はさまざまなトラブルを乗り越え、嬉しい悲鳴を上げるほどの売上につながりましたが、これはひとえに、そばにさんのおかげだと思っています。通常ならシステマティックに処理されてしまうトラブルシューティング窓口ではなく、Amazonの個別専任担当の方とお話ししながら進めてくださったことで販売開始時期も最低限の遅延で抑えられました。やはり、Amazonでの戦い方を熟知する専門家からのアドバイスは欠かせないと痛感しています。」(渡邉氏)
記事のポイント
課題
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効果
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